▼朝日町4月29日獅子舞取材2上郷宇津野熊野神社2023/05/04 13:48 (C) 獅子宿燻亭10
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大舟木熊野神社から松原の厳島神社に訪れ、神事の開始の情報が無いので、隣の宇
津野地区の例祭の様子をうかがいに集落に下りてきた。
公民館前に来ると、飾り付けされた祭り用の軽トラと若い衆達が集まっているので、
情報収集に尋ねると、こちらは宇津野の熊野神社の例祭の準備だという。親切な方が
神社に案内して戴けるというので神社に向かうと、下調べしていた神社と違っていた。
なんと、神社は元上郷小学校の校舎の上にあった。車を置き体育館の裏道を急坂を上
っていくと駐車場がある。案内してもらった若い衆は道幅が狭いので、普通車を回避
してくれた配慮だが、足腰が悲鳴を漏らし始めた。
上郷の宇津野地区熊野神社も高台に鎮座し、朝日町を一望できそうな風光明媚な位置
にあった。拝殿の扉が開かれ、大小の獅子頭一対が安置され、お祭りの準備が整っていた。
大型の獅子頭は先ほど対面した松原厳島神社の獅子頭と似ているが、作風は違っていて従
姉妹(いとこ)の様だ。眼を特に強調し、小振りの眉毛も細かく丁寧に彫刻されている。
小振りの獅子頭と比較し直線的な造形である
顎の底は木地のそのままの凸凹があり、木肌そのものの様だ
小さい方の獅子頭は二人立ちの獅子で神楽系の型である。印象では宮宿豊龍神社の二人立ち
の幕末米沢の桂八郎の作と同様の作風を感じる。
右手で頭部の後ろの紐を持ち、左手は顎の舌の根本を持つのだろうか
作風のヒントは獅子の顔意外にも口の中や軸棒の造り方にも残されている。
異なる系統、修験系の大型のムカデ獅子と伊勢大神楽系の獅子が融合した形で、長井の総宮
神社の黒獅子ムカデ獅子型の黒獅子舞と宮司家所蔵の神楽系の赤獅子の存在と重なるのであ
る。
獅子幕の幌の構造体は、塩ビの水道管を曲げ布を巻いて固定しやすい様にして紐で広がりを
調整して工夫している
宇津野熊野神社は現在も獅子舞(現地では獅子踊)を行なっている貴重な集落である。
獅子は神社から移動し、上郷小学校玄関前で幕の中にパイプを取り付け幌状に準備して
お囃子と共に出発し集落を回る、先ほどの花飾りの軽トラに広報スピーカーを取り付け
後ろからお囃子の音量や飲み物のサポートをする工夫だ。大獅子には20人程の老若男子
が準備をし、長半纏を着たお二方が付く。また代官風の塗笠を被り立派な羽織りを着て
いるのは指示役だろう。
神社から移動し、いよいよ獅子の組み立てに取り掛かる
お囃子は小中学生と父兄の5名ほど、締め太鼓3名である。
やはり獅子には鮎貝風の波浪模様の長半纏の2人が付き、短い棒に鈴が付いた錫杖風のも
のを持っていて「明治39年3月15日」と書かれていて、これも獅子を導く修験者の名残
なのだろう。
117年前の錫杖
大幌獅子組み立て完了 獅子頭の重量は計れなかったが重そうだ
獅子舞一行は宇津野地区を払い清め、お昼過ぎに戻って来るそうだ。賑やかなお囃子が
辺りに響き渡り、大小一対の獅子舞が勇壮に集落に進んでいくのを見送った。
お囃子のメロディーは長井四ヶ所でも見られる一人立ちの三匹獅子踊りの「花吸い」に
似ている感がある。八ツ沼や大谷の獅子踊りの影響だろうか。