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▼『登校拒否・不登校を考える夏の全国大会2016in宮城』参加レポート

『登校拒否・不登校を考える夏の全国大会2016in宮城』参加レポート/

8月20日(土)、21日(日)に東北学院大学土樋キャンパスにて『登校拒否・不登校を考える夏の全国大会2016in宮城』、『全国子ども交流合宿』が同時開催されました。主催は特定非営利活動法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワーク、特定非営利法人フリースクール全国ネットワークです。

 

この大会は登校拒否が激増するさなかの1990年、全国に点在した親の会や居場所がつながり、無理解な人が多い社会の中で、不登校を受け止め、子どもと共に歩むことを大切に、情報交換や学び合い、支え合いをしていくネットワークが誕生、毎年1泊2日で夏の全国合宿をするようになりました。そして2001年フリースクール全国ネットワークが誕生してからは、2つのネットワークが共催して行うようになり、今回で27回目を数えるとのことです。

 

震災から5年の節目の今年は16年ぶりの宮城県での開催ということで、隣の山形県に住むものとして微力ながらも協力したいという思いから、私も実行委員として関わらせていただくことになりました。

 

1日目は、奥州・仙台おもてなし集団「伊達武将隊」のアトラクションから始まりました。

 

続いての現地実行委員長の中村みちよさん ( 気仙沼フリースペースつなぎ ) のあいさつは、東日本大震災以降の全国からの支援に対しての感謝の言葉でした。復興が進んでいるように見えても、学校の校庭には仮設住宅が残されたままというように道半ばの面がまだ多いこと、宮城県の不登校は全国で1、2位を争う多さであるということもおっしゃっていました。まだまだ、震災の爪痕が精神的・経済的に大きく影響を及ぼしていることがわかりました。
 

最初のプログラムは、このネットワークの代表理事でもある奥地圭子さん(NPO法人東京シューレ理事長)の講演でした。奥地さんの講演は親が力を得られるような内容でした。

不登校調査が始まって50年、これまで国の施策や学校、行政の対応は「学校復帰」、親は「なんとか登校させたい」、社会からは「直すべき問題の子」とされてきましたが、不登校の子どもや、学校が苦しくて自ら命を絶つ子どもたちが減らないことから、本人の気持ちを大切にした「受け止める」発想が広がってきているとのことでした。

子どもという生命を制度としての学校にあてはめることは、合わない子どもがいて当然という言葉に深く納得しました。学校へ無理やり戻そうとするより、学ぶ場を学校外に広げ、一人一人の子どものニーズにあった成長を社会として用意すべきであるし、「子どもの学ぶ権利」が十分保障されるには、多様でなければならいというお話しでした。それには、まず辛くなった親が孤立しないように経験から学び合ったり、情報を得たりする『親の会』が大切になってくるし、子どもの気持ちや意思を尊重し学校外に安心して行ける『居場所・フリースペース、フリースクール』が必要なのだともおしゃっていました。私自身も娘の経験から、子どもが学び育つことができるのは、学校だけではなかったし、むしろ学校外での多様な人々の関わりや経験から元気を取り戻し、社会性を身につけていったように思います。

―「不登校」という行動が表現していることは、私たちへの宿題であって、「問題行動」や「困った子」ではない。一人一人がありのままで尊重されながら、その子が幸せになる道をみつけていく責務があると思う―という奥地さんの言葉が心に残りました。

 

そして、1日目のシンポジウム前半は『子ども・若者シンポジウム』でした。子どもたちは何を思い、何を感じているのか、当事者の声を大切にしようというものです。

わが子からは、なかなか心境などきくことができないものです。

ある若者は「不登校になっていなかったら壊れていた。」と言っていました。不登校は命を守る選択でもあるのだと感じました。また別の若者は不登校の心境を質問されて「人生の分岐点で普通に選択しただけなので、質問されても特に・・・。自分はただ人生を歩んでいるだけですから。」と答えていました。私はその言葉を聞いて激しく心を揺り動かされ、新たな価値観を得たような気がしました。確かに特別視されるようなことではなく、ひとつの生き方にすぎないのです。周りの視線が苦しくさせているのかもしれないと感じました。「ふり返ってみると、上下ではなく、人と人としてちゃんと向き合ってくれる人と出会えるかどうかが大切」という若者の言葉も心に響きました。勇気を出して語ってくれた4人のシンポジストに心から拍手を送りました。

 

シンポジウムの後半は『震災と不登校〜東日本大震災から5年、今を語る〜』というテーマで行われ、宮城県、福島県の5人の支援者が現状を語り、これからどのような支援やまなざしが必要かをみんなで考えました。

 

2日目の午前中は、10のテーマ別に分科会が各部屋で開催されました。私の担当は「不登校と経済問題」でした。NPO法人アスイク代表理事の大橋雄介さんが中心になって、不登校の子どもたちの中で経済的な悩みを抱えている親や家庭をどのように支援していくか、参加者の皆さんと共に語りました。また、支援する側が長く続けていくためにどのようなやり方があるか、全国からの参加者のさまざまな現場の声をうかがうことができ、これからの活動のヒントを得ることが出来ました。

 

そして午後からは、一番の目玉である尾木ママこと尾木直樹さんの記念講演がありました。「ありのままに今を輝く」というテーマでお話しいただきました。ユーモアあふれるお話しで、会場は笑いに包まれていました。

 

締めは「わが子の不登校から学んだこと」と題しての親シンポジウムが開かれました。シンポジストは4名で、私もその中の一人として娘との経験から得たことをお話しさせていただきました。みなさんの前でお話しすることで、自分に起こった過去の出来事が整理され、自分にとってどういうものだったかを言葉で表現できたことは、貴重な経験になりました。

 

クローバーの会@やまがたのメンバー(子どもを含む12名)も大会に一緒に参加し、共に考え学ぶことが出来ました。子どもたちは、親とは別に行動し、卓球大会やゲーム大会、牡蠣貝キャンドルづくり、大学の構内での逃走中など盛りだくさんのイベントに参加し、全国の仲間と交流を深めていたようです。


 

日本全国のさまざまな立場にいらっしゃる皆さんとの出会い、子どもたちがイキイキと活動する姿に元気をもらった二日間でした。仲間がいるということはそれだけで心強くなるものです。

のべ500名の参加者があったことも驚きですが、それ以上に山形からの参加が私の想像よりもたくさんいたことでした。つながりを求めている人が山形県内のあちらこちらにいることを知ることが出来ました。また、この大会でクローバーの会を知って下さった方から後日問い合わせがあり、悩みを抱え孤立していた方と新たにつながることができたこともうれしい出来事でした。

二日間の学びとつながりをこれからの親の会の活動に生かしていきたいと思います。

 

〜不登校・ひきこもりの子どもをもつ親の会〜

クローバーの会@やまがた 世話人 樋口愛子

 


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