ヤマガタンver9 > 外来にみる日本人の変化

Powered by samidare

▼外来にみる日本人の変化

今冬は積雪の多い年のようです。クリニック、白鷹あゆみの園の除雪に1日何万円もかかります。今冬はもう100万円以上の出費になっていると思います。この調子では何百万円かかることか。雪国に住んでいるのでこればかりはあきらめるより仕方がありません。
私は施設長だけではなく、クリニックの外来もしています。この地にきて今年で24年目です。最近の患者さんは、私が医者になった時、さらに白鷹の地で外来を始めた頃と明らかに違ってきていると、外来をしていて強く感じています。
まず、第1は、他の病院、医院で薬をもらい、数日後に当院に「薬が効かないので、もっと聞く薬をくれ。」と来院してくる患者さんがほとんど毎日います。現行の医療制度では、7割から9割他人のお金で医療を受けているので(自分では1割から3割しかお金を直接出してはいない)、他の医者が出した薬が効かないからと言って、さらに他人のお金を使って同じ種類でもっと強力な薬を処方することはできません。例えば、前医で2週間薬を処方されていれば、2週間は医療保険を使って同じ種類のもっと強力な薬は出せないのです。私が、「わかりました」と言って、もっと強い薬を出すと、医療保険のほうから後出した医者に十割全額返還命令が来るのです。医療費抑制政策もあって、そのような決まりになっているのです。そのことを説明してもすぐに納得してくれる患者さんは少ないです。中には「俺がこんなに痛いのになぜ出せないのだ。」と怒る患者さんも結構います。
私からすれば、「薬が効かない」と初めに受診して薬をもらった医者に言ってくれと言いたいです。よその医者に行って「もっと聞く薬をくれ」というのは、よその肉屋で買った肉の味が悪いので、別の肉屋に行って、もっといい肉をうんと安い値段でよこせと言っているようなものです。また、「俺がこんなに痛いのになぜもっと強い薬を出せないのだ。」と言うのは、金を貸してくれと銀行に行って、「貴方は当方の融資基準を満たしていないので融資はできません」と言われ、「俺がこんなに困っているのになぜ融資してくれないのだ。」と怒っているのと同じです。まるでやくざです。
はじめから優秀な私のところに来てくださいと言いたい。
第2には、1週間分薬を出しても、「効かない」と言って、次の日とか数日後に来院する患者さんの多さです。そんな患者さんには「1日で治ると思ったら、1週間分の薬は処方しませんから。」と話したり、「国際疼痛学会では治療して1か月以内で治る痛みは急性疼痛と定義しています。治療して3か月以上治らない痛みは慢性疼痛と言ってまた治療法が違ってくるのですよ。ですから、1,2週間治らないからと言って治りが悪いとは医者は思わないのですよ」と文章を見せて説明しています。
第3に、痛みが出ると、その日のうちか翌日に受診する患者さんが多いということです。そういう患者さんたちの多くは、病気でないことのほうが圧倒的に多いです。患者さんには「整形外科を受診する人の4割には病的な所見がない」という報告があるという文章をみせて、「病気でなくてもちょっとした不都合でとても痛いということはよくあるのですよ」と言って納得してもらっています。
第4に「なんで痛いのだ」と痛い原因を求めて来院する患者さんの多さです。医者は、病気か病気でないかを診るのであって、なんでそうなったかというのはあまり気にしないし、そんなことはわかりません。前の日に自分で気づかないで体に悪いことをしでかして痛くなったのかも知れないし、疲れが蓄積してなったのかもしれないし、はっきりした原因なんて、神様でもない詐欺師でもない医者が分かるわけがないのです。特に腰痛は、85%は原因のわからない非特異的腰痛と言われています。原因が分かったって、治療しなければ治らないのに。
第5に、来院する前にインターネットなどで調べて自分の病気を決めつけてくる人の多いこと。医者が違うことを言うと、「でも・・・」と強引に自分の考えに医者を引き込もうとする。同じ症状でもたくさん違う病気があるという基本的なことが分かっていないので、決めつけてくるのです。「胃が痛い」と言ったって、心労のこともあるし、胃癌の時もある。急性胃炎も慢性胃炎も胃痙攣もある。いろいろとあるのに勝手に一つの病気に決めつけてくる。
まだまだ挙げればきりがありませんが、共通しているのは、自分勝手ということです。自分の勝手な考えを他人に押し付ける。他人の意見を排除する。聞く耳を持たない。そういう人がものすごく増えました。まるですぐ近くの国々の人のようです。日本の教育が悪かったということですよ。
いちいち相手にしていたり、怒っていたらきりがないし、体にも悪いので、今年は怒らないことを自分の目標にしています。でも、毎日「むっ」とすることが多いのですが、「いかん、いかん、怒るな、怒るな」と自分に言い聞かせています。
こういう人々が最近とても多いので外来の時間が長くなり、前期高齢者となった私にはかなり堪えています。

(C) Stepup Communications Co.,LTD. All Rights Reserved Powered by samidare. System:enterpriz [network media]
ページTOPへ戻る