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▼32年前に消えた獅子・・現る!

32年前に消えた獅子・・現る!/
平成13年(西暦1991年)飯豊町萩生の諏訪神社所蔵の獅子頭二頭が盗難にあった。

獅子箱の記名から天明元年の作で、神社最古の獅子頭となる。

もう一頭は天照皇大神社が諏訪神社に合祀された際に寄贈された獅子頭である。

二頭の獅子頭は神社拝殿に安置されていたが、鍵が壊されて盗まれた。

証拠となるものは、おのおの正面からの獅子頭の写真が一枚ずつ残されているだけだった。

また、その他の三獅子は倉庫に保管されていて無事だった。

そして、手掛かりのないまま32年が経過した。

獅子宿燻亭7 2018年8/13 飯豊町萩生の諏訪神社の獅子頭
http://samidare.jp/shishi7/note?p=log&lid=458273


獅子宿燻亭6 2017年9/18「天明三年の生獅子」
http://samidare.jp/shishi6/note?p=log&lid=442222


 ところが令和5年6月その獅子頭と思われる一頭をネットオークションで偶然発見したのである。

一生に一度あるか無いかの奇跡だろう・・・すぐさま落札したことは言うまでも無い。

届いた獅子頭の内部を確認すると舌の両脇に記名の跡があるが、無造作に消されていた。







この獅子頭が諏訪神社の盗まれた獅子頭と証明するものの一つが失われていたのである。

記名の写真を撮影しパソコンで拡大すると断片的に文字が幾つか推測される。


推測した記名は

萩生  諏訪神社  天明三年○月○日

宮村 高橋小兵衛の作  同村 齋藤東三郎 塗り

塗師の齋藤東三郎は文政6年63才で亡くなっていて安永9年(天明元年)では20才ぐらいである。

32年前まで、上記のように残されていたのではないかと推測してみた。


 

 もう一つの証拠となる、唯一の写真との照合はどうだろう。獅子頭には同じ場所に割れや傷があり

、頭部と顎の歯のズレ、二本タテガミが抜けている場所も同じだった。盗難にあう前は既に隠居獅子

として使われていなかった獅子頭だったが、若い頃に獅子舞の稽古に用いた経験のある方の話では

頭部と顎の歯のズレがあるという特徴があったという。確かに8mm程横にずれている。

頭部と顎の軸穴部に隙間があり、横ずれを防ぐ栓が欠落している為である。

写真との照合と盗難前の証言によると、獅子頭の照合は合致していた。




左が唯一確認されている土屋氏所有の諏訪神社の天明元年の獅子頭の写真
右が発見した獅子頭




この報告を神社に伝え、神社関係者の方々が獅子宿に集まって戴きこの獅子頭を検分してもらった。

その当時を知る方々も何しろ32年前の獅子頭で当時の記憶も薄らいでいるので写真が唯一の戸籍に

なる。

飯豊町では手ノ子八幡神社の獅子頭が安永9年(西暦1780年今から243年前)

この天明元年(西暦1781年今から242年前)の獅子頭が推測するような時代の獅子頭とすれば飯豊町

でも最古の獅子頭の一つとなる。一個人が持つべき獅子頭でもなく当然、元の神社に治るべき事で、

関係者の方には返還を申し出ている。売りに出した方の祖父の物置に3・40年眠っていたものらしい。







 そこで返還までの猶予を活かして、この小兵衛作の獅子頭のレプリカ制作を始めた。

モデルの獅子を採寸しながら制作してみると、まず第一に前歯中央から鼻筋にかけてのS字のカーブ。

総宮神社の寛文11年改めと記された神社所蔵最古の獅子頭の特徴と同様と思われるが、左目の突出は

見られない。





左右の目の位置のズレがあり・・左目が右目より前方に数センチ出ている。

また鼻筋の5本のシワの幅は右側より狭まっている。目と目の間の逆U字型の部分も大きく幅が広い。







そして顎の厚みが有り、深く溝を彫って顎のラインをシャープに見せている。

またこの窪みは軽量化と共に獅子舞の際の頭部に当たる収まりのいい位置を示している。


軸棒を握る軸棒の穴の部分にも工夫が見られ、軸棒二本を握った時、角を丸めて擦れないような

配慮もあり、既にこの時代から獅子舞の為の意匠が考えられている。





小兵衛の作の特徴として、獅子頭内部の仕様に工夫が見られる。鼻や鼻筋、眼球、眉毛などの内部まで

しっかり彫り込まれ軽量化が施されている。形も左右対称に処理されているが、逆に破損部を見ると薄く

彫り過ぎた部分さえあるようだ。鼻の穴の彫りも独特で小兵衛の歯打ち対策として工夫されている。

軸穴や獅子幕の穴、タテガミの穴などを見ると実にシャープに施工している。



天明元年と思われる獅子頭内部


畔藤熊野神社 小兵衛作の獅子頭内部


天明元年の獅子頭は恐らく、柳より重い栃材を使用していると思われるので、一層軽量化を考えたの

だろう。今回のレプリカはあやめ公園産の大柳を材料にしている。既に乾燥時に割れが入って獅子頭には

適材ではないようだ。


レプリカ制作を進めながら242年前の高橋小兵衛の制作を思い浮かべる。

軸穴や獅子幕の穴、タテガミの穴などを見ると実にシャープに施工している。どの様な道具を使ってこんな

エッジの効いた穴を開けたのだろうか?

小兵衛が現代に居たら、聞きたい事が山ほどあるが答えてくれるだろうか・・・。







2023/10/12 08:43 (C) 獅子宿燻亭10
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