▼安定感のある作品2010/03/07 22:41 (C) ぶっくぶくの部屋
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佐々木譲の『廃墟に乞う』と、白石一文の『ほかならぬ人へ』。
なんと、二人の作家とも、今まで読んだことがない、たぶん…。
ぶっくぶくも、まだまだやのう。
File No.126
『廃墟に乞う』佐々木 譲(オール読物2010年3月号 960円)
オススメ度★★☆☆☆
『オール読物』(文芸春秋)の3月号は、直木賞受賞2作品が
全文掲載されているのでおトク、と思ってすぐ買ってきた。
佐々木譲はとくに警官シリーズの小説で有名な作家だが、
冒頭書いたように、これまで読む機会がなかった。
少しワクワクしながら読み始めたが、そんなに奇想天外・
荒唐無稽なところはなく、きわめて堅実な作品であるとの
印象を受けた。
表題作の主人公・仙道孝司は、PTSDで休職中の北海道警の刑事。
静養逗留中に、以前の上司だった男から、千葉で事件発生の
連絡を受ける。
それは、二人にとって、13年前の娼婦殺人事件を彷彿と
させた。彷彿とさせただけでなく、いともたやすく一人の
殺人犯が浮かび上がり、一線上に連なっていく。
こうしたところも、他の作家・作品なら、かなり思わせぶりに
頁を割くところなのだが、短編でもあるせいか、かなり
アッサリしている。
最後の部分もアッサリで終ってしまっている。
ところどころに、「なぜ?」と思わせる小さなナゾがちりばめ
られているが、著者はそのナゾ説きをしない、というか
まるで眼中にないかのようだ。
つまり、この小説は、意外な展開やトリック、ドンデン返し、
スリルなどを楽しませるのではなく、かつて炭鉱の町として
栄えた名残をとどめる廃墟、寂れた通り、犯人の家庭環境・境遇
などを、全体を通じたトーンとして感じさせる小説なのだ。
華々しさはないが、とてもシュールで、安定感がある作品だ。
文章もきわめて読みやすい。
集中して読まないと理解できないような文章は、はなから
エンターテイメント失格なのかもしれない。
その点、この作品は言うことなし、直木賞受賞も納得。
しかし、明朝には忘れてしまっているかも…。