ヤマガタンver9 > 第20回 もてすぎるのも困りもの 05、9,1

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▼第20回 もてすぎるのも困りもの 05、9,1

第20回 もてすぎるのも困りもの 05、9,1/
 


「赤く肌がでていて、羽がないトリがいるけど、どうしたんですか?病気ですか?」
指差す方向を見ると、そこには鳥肌むきだしのオンドリがいた。
「あれはね。病気じゃないんですよ。どういったらいいのかな・・。メンドリに求愛されてね・・。」
そうなんです。ぼくの見るところ、もてもての結果なんですね。でもそれがオスドリにはつらい。
さて、もともとオンドリは、メンドリと比べて身体が一回り大きく、羽も輝いていて、見るからに立派だ。トキの声を上げながらまわりを睥睨(へいげい)する勇壮な姿は、ニワトリたちとの長い付き合いがあるこのぼくでさえ惚れ惚れするほどだ。それがどうして・・・。

その辺の話をする前に、たくさんのメンドリのなかのオンドリの環境について説明しなければなるまい。この話を品よくまとめるのはとても難しい。下品になったとしても、それがニワトリ達の現実の世界なのであって、書き手のせいではないことをあらかじめお断りする。

そのオンドリ。ヒヨコのうちは色の違いがあるぐらいでかわいいかぎりだが、それがやがてたくましく成長し、トキの声をあげる頃になると、盛んにメンドリを追いまわすようになる。交尾を迫るためだ。その性欲の旺盛さには驚かされる。ぼくの知る限り、季節に関係なく交尾を行うことができるのは、ニワトリと人間だけだが、我々のとてもかなうところではない。計ったわけではないが、10分に一回ぐらいの割合でメンドリに挑んでいくのだから。

ぼくの鶏舎にはオンドリ一羽に対してメンドリが40から80羽ぐらいの割合でいる。その彼女たちを次から次と追いかけまわす。
メンドリたちは当初、そんなオンドリについて行けず、逃げ惑う。それを追いかけるオンドリ。
その求愛は相手かまわず、所かまわず、リアルで、露骨で、性急で・・・。

このような光景がしばらく続くのだが、それがやがて月日が経つと、彼女たちは逃げずに自分の方から積極的にオンドリのそばにやってくるようになるのだからおもしろい。一羽の上に乗っかって交尾しているそのすぐそばにやってきて、次は私に・・・という体勢をつくるのだ。

そして更に時は経ち、人間で言えば「中年」となったとき、主客は逆転する。自分たちの要望に応えることができなくなったオンドリに向かって、ツン、ツンと軽く突っつくようになる。それを避けようとするが、そこにまた別のメンドリがやってきてはツン、ツンと。

「しっかりしてよ。逃げないでこっちを向いて!」言葉にすればこんな感じなのだろうか。

オンドリ一羽にメンドリが大勢。かつて、彼にとっての歓迎すべき環境は、まったく違ったものとなって、オンドリに向かってくる。その結果、羽が一枚、また一枚と落ちていくというわけだ。

さて、これで羽を失い、貧相になってしまったオンドリの話は終わりだけれど、ここから私たちは何を学ぶべきだろうか。

ぼくにはとっても難し過ぎて分からない。


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