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▼館長日記 令和6年11月27日付け

 俳優の西田敏行さんが先日、お亡くなりになりました。西田さんというと、猪八戒だったりカメラマンだったり釣り人だったり、そうそう、タブチくんもやっていましたが、あの大河ドラマでは家康や秀忠、吉宗役などを務め、秀吉にも扮していました。
 大河ドラマと言えば最近、最上義光が主役の大河ドラマをという活動をされている団体の方々がお見えになり、短い時間でしたがお話をしました。
 主に「山形市史」にあることを話題としたのですが、そもそも最上家は、地方の豪族から発したものではなく、清和天皇や足利一族につながる血筋ゆえ、義光は良くも悪くも中央志向がありました。ゆえにその文化などに憧憬をもち、また京都などにいることも多かったことから、連歌師や僧などと連歌などを嗜むなどしていました。
 また、領土安寧のために信長・秀吉・家康などへの接近をはかりました。当館の重要展示品である鉄砲痕のある兜は信長より賜ったものであり、秀吉には奥州仕置きの際にみずから妻子を人質として渡し、秀次には駒姫を側室として嫁がせ、家康には次男の家親が10歳のとき徳川家康の家臣として仕えさせます。当時の戦国武将としては特別なことでないかもしれませんが、東北の大名としては中央政権との接触が著しいのです。特に義光(1546-1614)と家康(1543-1616)とは全く同時代であり、義光は亡くなる3カ月前にも病を押して駿府城に家康を訪ね、家康から薬や見舞いを賜るなどしています。
 ここからもわかるとおり、義光や山形だけをクローズアップするのではなく、信長・秀吉・家康との関わりや都での過ごし方、伊達や上杉といった大名との関係を描くことがドラマの鍵になるということです。
 また、義光の生涯を物語るにあっては、2歳下の妹の義姫が不可欠な登場人物となります。伊達正宗の母でもあり、また戦などでも重要な役割を担う人物で、そのエピソードは義光以上に興味をそそられます。ドラマ化においては、むしろ彼女を中心にして物語を進めた方が面白く、そしてまた、狂言回し的な役やナレーション役も担えそうです。などという話となりました。また、さまざまな武家に出入りできる連歌師は情報屋でもあり、妙味のある役どころではという話も。
 実はここだけの話ですが、館内展示の案内をするとき、義光だけの話では上の空でも、伊達や上杉(直江兼続も)の名前を出したとたん、話の食いつきが違います。また、地方を舞台にしたとき、お国自慢的なドラマになってしまうと、ほとんどの場合失敗します。話の流れが分断したり、鼻についたりするためです。地方が舞台のドラマ場合これが重要で、聖地だとかなんだとかは結果としてついてくるものです。
 さて、大河ドラマで最高の視聴率を誇ったのが「独眼竜政宗」です。「独眼竜」というのは、唐の猛将で隻眼の李克用が「独眼竜」と言われていたことに由来する呼称です。一方、義光は「虎将」と呼ばれています。これは義光が慶長十六(1611)年3月に従四位上左近衛少将に叙任され、その中国の官称である「虎賁郎将」に由来します。
 ここで勘のいい皆様はお気づきのこと思われますが、この二人を合わせると、なんと「タイガー&ドラゴン」となります。つまりはあのドラマか、ということで、なんとなく西田敏行さんにもつながります。とは言え、大河ドラマのタイトルとしてさすがに、このままこの「タイガー&ドラゴン」とするわけにもいかず、例えば「みちのくタイガー&ドラゴン」というのではどうでしょう。う〜む、やはりこれでは、一気に力が抜けてしまう感じですが、福島出身の西田さんはどう思われるでしょう。
 ところで時代劇というと、最近はどうも下火とのことですが、そんな中、最近話題になっているのが「タイムスリッパ−侍」という映画です。幕末の会津藩の侍が、長州藩の侍と刃を交えたとき雷に打たれ、現代の時代劇撮影所にタイムスリップしてくるという話です。低予算でスタッフが出演者も兼ね、撮影所の場所も人もその面白さに商売抜きで協力した作品とのこと。
 おっと、ここで閃きました。ならば、「タイムスリッパ− タイガー&ドラゴン」というのはどうでしょう。義光と政宗が雷に打たれて現代に。その、大河ドラマとしては絶対に無理とは思いますが。せめてテーマ曲でも一節。〽トンネル抜ければ〜ぁ、山が見えるから〜ぁ、そのままドン突きの〜ぉ、長谷堂城址で〜ぇ。ダメですよね、やっぱり、スミマセン。

(館長裏日誌)
2024/11/27 09:00 (C) 最上義光歴史館
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